2013年2月26日火曜日

春の色を感じる


窓辺で育てている豆苗が、やっとここまで大きくなりました。
この2月は本当に寒かったので、決して一日中暖かいわけではない我が家の窓辺でうまく育つか心配だったのですが、ちゃんと春を感じ取ってくれているようです。


芽吹いたばかりの緑は、大好きな色。
日本の伝統色でいうと萌黄色かな。だけど調べてみると、これに近い緑色には淡萌黄(うすもえぎ)やら、鶸色(ひわいろ)やら、緑とひとくちに言ってもたくさんあることを知りました。

自然に根ざした日本の色の名前は、身近なものも残念ながらもう身近ではなくなったものも、私の想像力をかき立ててくれます。


春の気配を早く感じたくて、モヘヤで編み物を始めました。
人生初のモヘヤでちょっとウキウキ♪

2013年2月19日火曜日

毛糸の誇りとアイデン-ニッティ

今年の作品第1号のArgoJamieson & SmithのShetland Aranという毛糸を使いました。フェアアイルでおなじみの毛糸メーカーですよね。私はまだ、フェアアイルに挑戦したことはないのですが、いつかは・・・という無謀な野望だけはいつも持っています。


それで、野望ついでにサイトをあれこれ見ていて、この毛糸を買いました。アランの毛糸は、50g玉がひとつ4ポンド(現在575円ほど)。そのなかにカラシ色っぽい糸があって、大好きな色なんだけど、なぜかそこだけ価格が£2.00って書いてある。2ポンド? なにかの間違い? 

そこで思いついた。試しにカートに入れてみよう(笑)。タイプミスならカートのなかでは正しい値段(4ポンド)で計算されるよね。だけど、カートに入っても値段は2ポンドのままだった。正確にはイギリス国内の付加価値税VATが差し引かれて、さらに安くなった(笑)。私はそのままレジに進んだのであった。

そんな経緯でお買い得に入手したこの毛糸、編んでみて思ったのが、「とっても素朴」ということ。カサカサしていて、モソモソしていて、まるで手紡ぎのように太さが変わっていくし、藁くずがとってもいっぱい挟まっていて、細かいゴミのようなものもくっついていて、羊と毛糸の中間のような感じ! 毛糸に挟まった藁くずを取り除きながら「これは君のおやつだったの? それとも昼寝用のベッド?」などと羊と対話しながら編むのは実に楽しいことでした。

そうして私にしては驚異的な早さで編み上がったカーディガンをブロッキングして、袖を通してみると、それはもう夢のような不思議な感覚。温かくて、しっかりと包み込んでくれる感じで、頼りがいがあって、丈夫そうで、長く飽きずに着られそうで。柔らかくて繊細な毛糸も大好きですが、私はこういう糸が好きなんだと初めて認識した瞬間でした。

さて、この感覚はいったい何なのか? 考えを巡らせていくうちに、それは「毛糸の誇り」なのかなと思うようになりました。自国で生まれ育った羊から毛糸を作る。次々と新製品は出さない。昔ながらの、スタンダードな毛糸をずっと作り続ける。

言い方を変えればそれは英国の誇りなのかもしれません。というか産業革命の誇り(笑)? ともあれ、翻って日本の国産羊毛はどうなんだろうということが今度は気になってきました。日本にも毛糸メーカーはいくつもありますが、恐らく原毛は多くの場合、日本産ではなさそう。ラベルにどこ産の羊毛を使ってますって、あまり書いてない気がする。よく知らないのですが、農産物と違って産地の表示は義務づけられてないよね? だけど、野菜や魚を買うときはどこ産の商品かとても気にするのに、身につける毛糸は?

気になり出すとけっこうとことん気になるタチなので、国産羊毛で毛糸を作っているメーカーがあるのではと思って検索してみました。個人レベルではありましたが、メーカーとしては見当たらない・・・(ご存じの方、どうぞ教えてください)。

手紡ぎの世界では知らない人はいない、京都の有名な原毛屋さん「スピンハウスポンタ」改め「スピナッツ」さんでは2011年から国産羊毛の取り扱いを始めました。スピナーの間では以前から国産羊毛も使われているようだけど、それがニッターまでは行き渡らない。流通量の問題? 品質的な問題? 採算の問題? うーん、モヤモヤするなあ。

記事が長くなってきちゃったので、この件は自分への宿題ということにしますが(モヤモヤしたままかい!)、もし自分がお金持ちだったら、国産羊毛の毛糸を製造販売したいという妄想がふくらみました。いろいろと問題は山積していそうですが。

編み物は日本ではまだ比較的新しい手芸です。明治9、10年に刊行された『童女筌』が日本で最初の編み物教科書だそうで、たた&たた夫さんのサイトで勉強しました(面白い!)。当時から、そして今でも私たちは主に外国からやってきた羊毛で編み物をしていますが、いつの日か、多くのニッターが、日本で生まれて日本の草を食べて育った羊から作られた毛糸で編み物を楽しめる日が来るといいなーと夢見ています。表題の「アイデン-ニッティ」とは、アイデンティティとニットを組み合わせたオリジナルの造語です(笑)。


2013年2月13日水曜日

セーター完成 - シンプルな幽体離脱セーター

いろいろなニッターさんのブログを見ていて実は気になっているのが、ダンナさん、彼氏など身近な成人男性に何か編んでいるかどうかということ。

Ravelryを見てもわかりますが、男性用のパターンって数が少ないし、編まれている数も圧倒的に女性ものより少ないと思う。理由としてはいくつか簡単に挙げられるんだけど、

  1. 編む分量が多い。すなわち、必要な毛糸の量もたくさん。延々と編んでも終わらない。
  2. デザインがシンプルなものが多いのでモチベーションが上がらない。変わったデザインとか、頑張った割には相手に好まれないことが多い。色もベーシックなものが中心。無難すぎて編んでいて気持ちが高揚しない。
  3. 自分、またはお子さんのものを編むのに手一杯で、そっちまで手が回らない。
  4. そもそもダンナさん、彼氏が手編みに興味ない。編んでほしいと言わない。

そんなところでしょうか。1〜3に関しては、編む側の努力、もしくは忍耐でなんとかなるかもしれないけど、4はねえ、どうしようもないですよねえ。

で、ウチの場合はどうかというと、これが真逆(笑)。 私が編み物をしていると、「何編んでるの? 俺の?」とあきれるほど無邪気に聞いてきます。自分のじゃないと知るとちょっと寂しそう(笑)。なんかワンコっぽい。そして、こんな初心者の下手くそな編み物なのに、編んであげるとうれしそうに着ている。見るからに編み目が揃ってなかったりして、こっちが恥ずかしくなっちゃうくらい。

でも、喜んでもらえるなら、ニッター冥利に尽きるってもんですよね。ええ、幸せ者であります。そして編みました。今回はなんと、バレンタインデーに初めて間に合いましたよ!


じゃん! 地味であります(笑)。これ以上ないってくらいベーシック。我ながら恥ずかしくなってきたので、もうこれくらいで画像は勘弁してください。あ、もう1枚だけ。


弁解するわけではないですが、男のおしゃれとは奇をてらわずベーシックなものを上質の素材で着こなすものである、と思っているので、これでいいのです。・・・本当は相棒はアランセーターが好きということも知っているのですが、こちらの技術が追いつかないので、そのうち、ね。

パターンはHeidi Kirrmaierさんのフリーパターン「Simple Summer Tweed Top Down V-Neck」。使用糸はパピーのシェットランド。上質な素材で、と言った以上、ちょっとフンパツしました(笑)。前から編んでみたかった憧れの糸。モチモチしていて触り心地がいいですねー♪

見てお分かりの通り、トップダウン、シームレス、ラグラン、Vネックという4大基本要素をすべてクリア。 ヒネリはどこにもありません。だけど、パターン自体は「ご自由にどうぞ」的なよくいえば懐の深いパターンで、割とアバウトな感じなので思った通りに仕上げるにはなんらかのアレンジやカスタムが必要かもしれません。構造がシンプルなので、初心者でもアレンジしやすくて、編んでいて楽しかったです。指定糸より細い糸なので、ゲージの段階でうんうん唸って考えたり、Vネックの仕上げ、リブ編み、袖の減らし目などなど、いろいろいじりました。一目ゴム編み止めも頑張ったしね!

とはいえ、メリヤス編みの特訓かっていうくらいメリヤス続きでありました。「メリヤス砂漠」という表現をあちこちで見かけて、うまいこと言うなあと感心していたのですが、まさにその状態といえましょう。メリヤス砂漠・・・変化がない、味気ない、退屈ということなのでしょうね。でも私、実はメリヤス編み好きなのです。

海外のニッターさんが「mindless knitting」という表現をされていて、うん、まさにそんな感じだと思いました。ときどき意識が飛ぶ(笑)。ちょっと瞑想っぽいところが好き。ヨガの一形態として「編みヨガ」なんかどうかしら(笑)。

ときどき幽体離脱しながら編んだセーター、早速相棒に渡すとやっぱり喜んで、その日着てくれました。が!「丈がもうちょい長いといいな」という注文が。ふふふ、トップダウンなので私にも簡単に修正できますよ。


2013年2月11日月曜日

ニットが似合うロック・スターは誰だ その4

忘れたころにやって来る、好評ニット&ロックシリーズ。今年最初に取り上げるアーティストは、モリッシーです! 「え? 誰?」とか言わないでくださいね、モリッシーですよ。80年代英国の最重要バンド、ザ・スミスのボーカルといえばわかる人にはわかる。それだけでいいのです。

 今でこそ、インディーズといえばれっきとした音楽のいちジャンルとしての地位を確立していますが、ザ・スミスというバンドの登場によってそれは成し遂げられたといってもいいと思います。要するに70年代に築き上げられたロックの固定概念を覆した張本人。従来のセックス&ドラッグのイメージからまったく逆方向にベクトルが振れちゃった。

ま、余計な解説は抜きにして、それでは早速、モリッシー・イン・ニットウェア、行ってみましょう。


どうです、ベーシックなVネックのセーターがとっても素敵♪ ロック・ミュージシャンというよりはどこかの文学青年みたい、と思ったあなた、そうなんです。彼はオスカー・ワイルドを愛読する文学青年だったのです。


このセーター、いいなあ。こういうトラディショナルな感じの男子セーター、好きです。イギリスゴム編みかな?

モリッシーはベジタリアンとしても知られ、また熱心な動物愛護活動家でもあります。乳製品や卵は口にするのでビーガンではないけれど、動物愛護の観点から皮ジャンはおろか革靴も身につけない、とどこかで聞いたことがあります。

それで、昨年5月、待望の来日公演を果たしたのですが、その際ユニクロの柳井社長あてに手紙を送ったことでちょっと話題になりました。手紙の内容は「ミュールシングを行っているオーストラリアの羊毛業者からのウールを取り扱わないでください」というもの。実は私、恥ずかしながらそのことがあるまで、そういう問題が存在することを知らなかったのです。おかげで勉強になりました。毛糸を買うときにも原毛の産地はどこか、ちょっと注意してみるようになったり。


 で、モリッシーのお手紙が功を奏したのか、その後ユニクロはミュールシングを行う農家からのウールの調達を段階的に廃止していくと発表しています。

ということで編み物を愛好する私たちにもあながち無縁ではないといえるモリッシー。なにはともあれ気になったらぜひその音楽を聴いてみてくださいね。私は人生のあるとーっても辛かった時期に、この曲を毎晩、もう何度も何度も繰り返し聴いていました。2分にも満たない短い曲ですが、どれほどなぐさめられ、励まされたことか。私にとって特別な、なくてはならない存在、それがモリッシーなのです。

2013年2月1日金曜日

カーディガン完成 - Argo

お正月から編み始めたカーディガンが完成しました。
といっても完成はけっこう前のことで、しかも

編んでいる期間 < ブロッキングとボタンつけ期間

という遅仕上げニッターであります。


パターンはロシア人デザイナーSvetlana VolkovaさんのArgoという作品です。Argoといえばちょうどベン・アフレックの映画が公開中なので、アレのこと?と思いましたが、調べてみたら、ギリシア神話に出てくる大きな船の名前なのですね。そしてこの船、黄金の羊毛(the Golden Fleece)を探す冒険のために造られたというのですから、ニッターにはとっても興味深いところです。ゴールデン・フリース。なんという甘美な響き(笑)。

編み物を愛する勇者たちが伝説の羊毛を捜して旅をする物語、みたいな小説が書けそう。うっとり(妄想中)。武器はもちろん輪針とかまち針とか(弱そう)。

話はそれましたが、ギリシア神話も編み物に関係するとなると俄然興味がわいてきますね。いや、別に編み物に直接は関係していないけれども。


このカーディガンはトップダウン、シームレスという理想の黄金律(?)を兼ね備えたパターンです。というか、それしか編めないので選んだとも言えます。これまでトップダウン、シームレスのウェアといえばラグランスリーブしか経験がありませんが、こちらはなんとセットイン・スリーブ形式。どうやら今流行しているらしい、SusieMという方が開発したcontiguous methodという編み方が採用されているらしいのですよ。

ラグランじゃないのにどうやって肩線と身頃と袖を編んでいくの?と最初は「???」状態でしたが、パターンのまま編んでいくとアーラ不思議、いつの間にかちゃんと形になっているではありませんか! 数回のラップ&ターンや増し目をするだけでできちゃうなんてミラクル! 思わず「ほーう」なんて声を上げてしまいました。


大きさはxsからxxxLまで7種類展開されていますが、中間の人は小さいサイズで編んだほうがいいわよ、というスヴェトラナさんの忠告に従ってxsで編みました。編んでいる最中は「どう考えても小さくないか?」と何度も不安になりましたが、出来上がってみたらピッタリ! 怖いぐらいピッタリ! 小さいほうで正解だった!

ただ、編んだ人が何人も指摘しているように、パターン通り編むと、わりと袖がきつめです。脇の下とか場合によっては窮屈に感じられるかもしれません。私も少ーし袖の目数を増やしました。ほんのちょっと。袖の減らし目も回数を減らしました。やっぱりロシア人って手足が細くて長いのかしら。

それと、本来なら別に編んで後から縫いつけるポケットがあって、それがデザインのポイントでもあるのですが、私も一応編んだのですが、まだつけていません。ボディは7段階あるのにポケットは1サイズなので、パターンのまま作るとxsの私には巨大ポケットになっちゃう。で、パターンの2/3くらいの大きさに小さく作ったのですが、、、それでも私の場合、身丈が短い(涙)ので、バランス的にどうなのよ、、、と迷ったりして、まだつけてない。そのうち気が変わってポケットをつけるかもしれません。


ともあれ、このパターン、ほんとに楽しく編めました。とてもわかりやすく書かれているし、難しいテクニックもほとんどないし(wrap & turn だけかな)、私のように初めてセットイン・スリーブに挑戦する方でも大丈夫だと思います。これは絶対にまた編みたいパターンです。次回はもうちょっと襟を高めにしたいなー。コート風にね。